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2015-05-24 IoTの”I”

_ [仕事][インターネット] IoTの”I”

  とにもかくにも、流行り言葉は”IoT” なのだが、まぁはっきり言って、どうも革新的じゃない。もうね、”IoT”の”I” ってなんだよって突っ込みたくなる。

  たしにか、ウェアラブルにしてもM2Mにしても、いろいろなものがConnectedになって、いろいろな可能性はある。でも、ConnectedとInternetは違うだろうになぁと思ってしまう。

 まぁ、こういうことにこだわるのは、Internet 原理主義者的なんだろうけど、 本当にIoTが革新的な産業創出をするとしたら、”I”は、The Internetの”I”になる必要があると僕は思う。それには、The Internet って何かということを、しっかり意識していることが必要だ。つまり、技術としてだけでなく、思想的背景としてのEnd To End、Autonomous Deployment、Layered Modelを理解し、その思想がなぜインターネット革命をもたらしたかを理解しているかが重要な鍵だろう。

 そんななかで、おやおやと思うのは、「IoTの世界の標準はこれだと」を声高に訴えるインターネット的思想のないレガシーな人達の争いだ。まるで、なにか一つのシステムがIoTの世界を御するとでも思っているのかのような騒ぎを展開している。特に違和感があるのは、無線通信の方式に基づいた技術差異を強調する姿勢だ。

 たしかに、すべてのモノがインターネットにつながる世界では、そのアクセス方式として無線は不可欠だ。無線通信というのは、周波数や電力といったPHY 層という物理的な仕様の違いで、通信距離も通信容量も異なる。また、多重化制御を行うMAC層や接続制御をするLLC層は、互いに密に関係し最適化されているので、いわば各無線方式に固有の特性をもつ。

 だから、標準化ではこれらの部分には、IEEE802.11や15という規格があるが、これはら主にPHY/MAC/LLCをその範囲としてている。そして、これらの方式の上にネットワークやトランスポートというわれるネットワーク間での経路制御やセッション管理などがある。インターネットでは、通信のプリミティブである通信相手の特定(アドレス)と、ネットワーク間での中継のための経路制御という部分を標準化したTCP/IPという仕組みが、アプリケーションが特定のアクセス方式やインフラに依存しない垂直分離構造を実現したことが、まさに革新の肝だったと思う。(まぁ、ロケーター・ID分離は出来ていないけど...)

 実際に、WEBブラウザ専用の無線アクセスなんていうのはないし、チャット専用の無線通信なんていうのは、インターネットにはない。つまり、多様なモノがつながるIoT世界での標準云々を語るなら、多様なアクセス方式に対して、モジュール化と階層化で、柔軟な網羅性が必要であり、特定の無線方式の技術優位性を論拠にした標準化戦略はこれに矛盾する。

 一番典型的なのは、IEEE802.15.4という近距離無線のPHY/MACの規格の上に、乱立する各アライアンスの自画自賛的なアビールだ。まず、Sub1Gと称される1GHz 以下の周波数は、国際的には残念ながらバンド幅も、許容電力も違うが、そのあたりは、うまく整合が取れる形で標準化がされた。また、IEEE802.16 WiMaxがしたような、まったくかけ離れた周波数帯を、あたかも一つの国際規格です的な無茶振りもない。(あの無茶ぶりした国際標準が実際にどうなったかは….ry)

 だから、逆に言えばおなじIEEE802.15.4なのに、わざわざ異なる上位層毎に、異なるチップをつくる必要はなく、PHY/MACの多くは共通化できるのに、なぜか垂直統合でトータルソリューション的な話が多い。

 また、メッシュネットワーク、マルチホップ系アピールも、それがあたかも全てのシーンを網羅するがごとく叫んでいるのは、もう滑稽としかいいようがない。トポロジー的にも、全てのモノがThe Internetに直接にグローバルIPで接続され、経路交換や名前解決をするわけではなく、LANや携帯網に接続される階層をもつケースのほうが多いだろう。そこには、LANにはLANのWANにはWANにあった機能の最適化がある。つまり、まったく階層化のないフラットなフルメッシュやマルチホップが求められる範囲は、限定的だし、どこかで有線や他の網へのゲートウェイが入るのに、♪メッシュは続くよ、どこまで♪といった、原理主義的アピールにもうんざりだ。

 例えば、工場内や農場内に大量に設置されるセンサーに直接IPv6アドレスを付与して、IP接続することを想定してみる。6LoWPANというスタックは、確かにフットプリントの軽いスタックではあるが、それでもそこそこのメモリは必要となる。温度センサー一つ一つに、IPv6や複雑なAKM(認証・鍵交換)のスタックを入れる場合、センサーの小さな情報を一番近くのネットワークに伝えるのに、必要なプロトコルオーバーヘッドも大きくなる。こういう実装のコストパフォーマンスを考慮しない、ご都合主義の提案には呆れ返るばかりだ。

 というわけで、The Internetな思想を理解しない旧世代のIoT標準化論議というのにうんざりさせれられたので、ちょっと帰国する飛行機のなかで、愚痴をメモってみた。


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